People with style Part9 Eric Clapton

【第9回】スタイルのある人 – エリック・クラプトン

男も女もスタイルのある人に憧れる。どうしてあの人はいつもあんなに素敵なんだろう…それはきっと揺るぎないスタイルがあるから。連載「PEOPLE WITH STYLE(スタイルのある人)」第9回は現在通算23回目となる来日公演中の Eric Clapton(エリック・クラプトン)をフィーチャー。上質なブルースミュージックを追求し続ける稀代のギタリストのヒストリーとファッション観を解剖する。


Written : LIVE IN RUGGED

ブルースロックとハードロックの礎を築いた1960年代

「ギターの神様」Eric Clapton(エリック・クラプトン)が2023年4月15日(土)~4月24日(月)の期間中、日本武道館にて来日公演を開催中。なんとこれまでの日本武道館での公演数が通算100回を超え、海外のアーティストとしては歴代1位になるという。先月78歳の誕生日を迎えながら今なお精力的に音楽活動を行っているエリック・クラプトンは、端的に言ってブルースとロックにおける生きた伝説だ。まずは波乱に満ちたキャリアを簡単に振り返ってみよう。
クラプトンのプロギタリストとしてのキャリアは The Yardbirds(ヤードバーズ)から始まった。先日逝去した伝説的なギタープレイヤーであるJeff Beck(ジェフ・ベック)や、Led Zepplein(レッド・ツェッペリン)の Jimmy Page(ジミー・ペイジ)も在籍したヤードバーズでは、伝統的なブルースやR&Bに根ざした曲を独自にアレンジ。ライブでは1曲を30分以上もの時間を掛けて演奏することもあったという。しかし、才能がありながらヒットに恵まれなかったバンドがポップ路線に転換したことでクラプトンは脱退を決意し、 John Mayall & the Bluesbreakers(ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ)に加入。ブルースブレイカーズにも Jack Bruce(ジャック・ブルース)や Peter Green(ピーター・グリーン)、 Mick Fleetwood(ミック・フリートウッド)、そして Mick Taylor(ミック・テイラー)といったレジェンド級のプレイヤーが多く在籍していたことで知られている。クラプトンはブルースブレイカーズにエレクトリックギター主導のブルースという礎を築き、アルバム「Blues Breakers with Eric Clapton」では全英チャートで最高6位を記録。なお、このアルバムで主に使用した1960年製の〈Gibson(ギブソン)〉Les Paul Standard(レス・ポール・スタンダード)と Marshall(マーシャル)アンプによるディストーションの効いた粘り気のあるファットなサウンドは、今日に至るロック/ブルースサウンドの方向性を決定づけるほどのインパクトがあったと言われている。当時本国イギリス以外ではセールス的に成功を収めることはなかったものの、発売から57年もの時間が経った現在でもブリティッシュ・ブルースの最高峰と評価する評論家も多い。
【併せてチェックしたい】
ジェフ・ベック氏のご逝去に寄せて
1966年にジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズを脱退し、パワートリオバンドである CREAM(クリーム)に加入。ブルース、ポップ、サイケデリックを融合した当時としては非常に画期的な音楽性とライブ時の即興演奏で、同時期に名をあげていた Jimi Hendrix(ジミ・ヘンドリックス)とともにハードロックの基礎となる音楽形態を生み出した。そう、クラプトンはヤードバーズおよびジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズで大音量のブルースロックの基礎を形成し、その直後にハードロックの基礎も築き上げたことになる。この事実だけを切り取っても、クラプトンがいかに音楽シーンにおいて重要な偉業を果たしてきたかが分かるだろう。
ちなみにクリームはたった3年間しか活動せず、クラプトンはその後スーパーグループである Blind Faith(ブラインド・フェイス)を結成。ここでもブルースロックを主軸にアルバム「Blind Faith(邦題:スーパー・ジャイアンツ)」を発表し、アメリカとイギリスのチャートで1位を獲得するロケットスタートを切るも、メンバーのジャック・ブルースと Ginger Baker(ジンジャー・ベイカー)の不仲が解消せず間もなく解散してしまう…と、ここまでがクラプトンのソロデビュー以前のざっくりとしたヒストリーとなる。

People with style Part9 Eric Clapton
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プライベートで大きな悲劇や苦しみに見舞われるも、音楽性を広げ世界的な成功を収めた1970~90年代

多くのギタリストがバンド活動からソロ活動に転換して大きな挫折や失敗を味わうのを横目に、クラプトンのソロとしてのキャリアは浮き沈みこそあれど輝かしさにあふれている。歌に重心を置いた作風へとシフトし、音楽的な引き出しを幅広く広げた1970~80年代、グラミー賞を含めた数々のアワードを受賞し世界的な成功を収めた90年代。ソロ転換前のバンド期こそがクラプトンの音楽性を語るうえでもっとも重要と考えるファンも多いようだが、70~90年代を通じて作り上げた作風と生み出した名曲は2000年代以降のクラプトンの音楽性に直接つながっている点で決して引けを取らない。
しかし、華やかな活躍の裏に数々の悲劇がクラプトンを襲う。盟友ジミ・ヘンドリックスと Stevie Ray Vaughan(スティーヴィー・レイ・ヴォーン)の突然死。レイ・ヴォーンが亡くなった1990年の翌年には4歳の息子がアパートから転落死し、クラプトンをどん底に追い込む。息子を突然失った深い悲しみは「ティアーズ・イン・ヘヴン」という曲に昇華され、同時期に発売されたアルバム「アンプラグド~アコースティック・クラプトン」で6つのグラミー賞を獲得したが、家族や友人を突然失う悲劇はクラプトンの人生観や価値観に多大な影響を与えたと言われている。また、長く苦しんだアルコールとドラッグの問題も常にクラプトンのプライベートを深刻な状態に追いやっていた。誰もが羨む大きな成功と、誰も経験したくない悲劇と苦しみ。強烈な光と影のコントラストはクラプトンを痛めつけたことは間違いないだろう。しかし、クラプトンの凄いところは痛みや苦しみ、喪失感を作曲と演奏に昇華できたことではないだろうか。
70年代以降のギタリストとしてのクラプトンを振り返ると、〈Fender(フェンダー)〉Stratocaster(ストラトキャスター)愛用ギタリストとしての影響力の高さも忘れてはいけないポイントだ。先に述べたようにキャリア最初期は〈ギブソン〉レス・ポール・スタンダードをよく使っていたが、その後〈フェンダー〉ストラトキャスターをメインギターに変更。伝説的な BLACKIE(ブラッキー)をはじめとしたヴィンテージモデルはファンの間で今も神格化され、数え切れないほどリリースされたシグネチャーモデルの評価も高い。〈フェンダー〉ストラトキャスター=ブルースロックというパブリックイメージの形成にもっとも貢献したギタリストのひとりがクラプトンなのだ。

People with style Part9 Eric Clapton
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〈Levi’s®〉のリラックスしたデニムスタイルにヴィンテージウォッチを合わせる

ここからはクラプトンのファッションについて考察してみよう。若い頃は英国的なスーツやシャツ+ベストというシックなスタイルでステージに立つことも多かったが、年齢を重ねるにつれてリラックスしたカジュアルな恰好で表舞台に立つことが多い。ダボッとしたシルエットの〈Levi’s®(リーバイス®)〉501® やデニムのトラッカージャケットは近年のクラプトンのもっともお気に入りのワードローブのようだ。秋冬はジャケットを着用することも多いが、春夏はオーバーサイズの半袖シャツに袖を通す姿もファンにはおなじみだろう。
クラプトンは〈Rolex(ロレックス)〉や〈Patek Philippe(パテック・フィリップ)〉をはじめとしたヴィンテージウォッチの愛好家としても知られている。単色のシルバートーンの文字盤を持つことから「アルビノ・デイトナ」の異名を持つ〈ロレックス〉Daytona(デイトナ)Ref.6263 は2008年のサザビーズ・ニューヨークに出品され、50万5,000ドルという高値でオークションは幕を閉じた。
また、非常に希少性の高いプラチナ製のパーペチュアルカレンダー・クロノグラフである〈パテック・フィリップ〉Ref.2499 も所有し時計業界の噂の的になった。クラプトン自身かなり気に入っていたようだが、2012年11月12日にジュネーブのクリスティーズに出品され、344万3,000スイスフラン(約4億円)という目を疑うようなハイプライスで落札されている。

People with style Part9 Eric Clapton
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クラプトンが愛用するシルバージュエリーは?

ジュエリーにおいてもクラプトンは感性の高さを発揮している。1998年発表のアルバム「PILGRIM(プルグリム)」のアルバムジャケットにて、当時人気が爆発する前の〈TRAVIS WALKER(トラヴィス・ワーカー)〉のオリジナルスカルリングを着用。「このスカルリングはどこのブランドのものだ?」と国内外で話題となった。クラプトンは恵比寿のシルバージュエリーショップ「MIC EBISU(ミック恵比寿)」に訪れ、〈トラヴィス・ワーカー〉をはじめとしたシルバージュエリーをショーケース1個分近く購入したという。当時すでに50歳を超えていたクラプトンがハードなスカルリングを堂々と身に着ける姿のかっこ良さは衝撃的なほどだった。
同時期にストリートのゴッドファーザー、藤原ヒロシ氏の紹介で〈goro’s(ゴローズ)〉と出会い、高橋吾郎氏とも親交を深めた。フェザーネックレスやフェザーリングをはじめとしたシルバージュエリーはもちろん、ステージ用の特注のギターストラップをオーダーするなど、クラプトンにとって〈ゴローズ〉はもっとも愛着の強いジュエリーブランドになっているようだ。実際に今でも〈ゴローズ〉を着用する姿がオンオフ問わず目撃されている。以下のフォトギャラリーをご覧いただければ分かるように、藤原ヒロシ氏やクラプトンを崇拝するアメリカのギタリスト/シンガーである John Mayer(ジョン・メイヤー)とはステージで何度も共演する仲だが、〈ゴローズ〉を介してさらに強いつながりができたようだ。

People with style Part9 Eric Clapton
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2023年が最後の来日公演の可能性が高い

「ギターの神様」と呼ばれ崇められることに対しては抵抗があるようだが、クラプトンは50年前も今もギターキッズにとって絶対的な神のような存在だ。ブルースという音楽をポピュラーにしたこと、ブルースとロックにおいてギターの存在感を絶対的にしたことの功績はあまりに偉大だし、膨大と言えるほど多い楽曲がどの時代においてもクラプトン以外の何物でもないことにも感嘆せざるを得ない。アルコールとドラッグで身を滅ぼす寸前まで堕ちながら見事に復活し、78歳を迎えた今も上質な音楽を私たちに届けてくれることは、死を含めた突然の悲劇に見舞われることの多いエンターテインメントの世界において奇跡のようなものと言える。
80歳が目前に迫っているエリック・クラプトンのライブを体感できる機会は、もしかしたら今回が最後かもしれない。親日家であるクラプトンには日本人の友人も多いため、日本武道館には連日著名人を含めたお知り合いが足を運ぶはず。我々ファッション好きにとってはステージでの服装や身に着ける小物も大いに気になるところだけれど、演奏が始まれば世界最高峰のブルース/ロック/ポップミュージックに浸ることができる。筆者は以前日本武道館公演を鑑賞したことがあるが、最高の中の最高だったことを付け加えておきたい。
エリック・クラプトンの来日公演は先に述べたように2023年4月15日(土)~4月24日(月)の期間で開催中。詳しくは「ウドー公式サイト」をチェックしてみよう。
LIVE IN RUGGEDがお届けする連載「PEOPLE WITH STYLE(スタイルのある人)」はこちら
〈ゴローズ〉に関連する記事はこちらをチェック。
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