HERMÈS 2024年秋冬コレクション – 洗練を超えた究極の “クワイエット ラグジュアリー”
例年以上にレザーウェアが豊富に揃う〈HERMÈS〉の2024年秋冬コレクションをフィーチャー
ファッション業界におけるピラミッド型ヒエラルキーの頂点に君臨する〈HERMÈS〉
〈HERMÈS(エルメス)〉が2024年秋冬コレクションをフランス・パリ16区のイエナ宮で発表した。
いつの時代も〈エルメス〉のクリエイションは間違いのないものだが、2024年秋冬コレクションにおいてもVéronique Nichanian(ヴェロニク・ニシャニアン)は最高の仕事をしたと言っていいだろう。場所自体に高貴な空気感が漂うフランス・パリ16区のイエナ宮で発表された最新コレクションは、同メゾンの比類なきラグジュアリーが遺憾なく発揮されている。思えば、世界中のメゾンやハイブランド、ストリートブランドに至るまで、名のあるブランドであれば〈エルメス〉の影響を少なからず受けているはずだし、中には密かに究極の目標としているところもあるはず。ファッション業界におけるピラミッド型ヒエラルキーの頂点に君臨しながら、ある意味で孤高の存在でもある〈エルメス〉は、モノ作りと文化的価値の創造という点で常に絶対王者であり続けている。10年以上も続いた “ラグジュアリー ストリート” ブームにおいては「もっともHYPEなブランド」ではなかったかもしれないが、今時代は明らかに〈エルメス〉に追いついた。そう、2023年秋冬シーズンから本格的に盛り上がっている “クワイエット ラグジュアリー” にこれ以上ハマるブランドは滅多にない。
クラシックとモダンがミックスされたデザイン – 〈エルメス〉流の遊び心も
神話を思わせる白い柱がそびえ立つ会場でお披露目された〈エルメス〉2024年秋冬コレクションは、グレーのシャツとタートルネックに、ヘリンボーンの肩が落ちたコートを羽織ったルックからスタート。ダブルカラーのピーコートやロングコート、A-2ジャケット、ブルゾンやベストなど、メンズファッションを代表するアウター類がひとつずつ登場した。
見るからにしっとりとした質感のラムレザーと上質なウールを組み合わせたリバーシブルコートや、温かみのあるボア素材をたっぷりと使った重厚感あふれるアウター、重ね着したパーカージャケット、取り外し可能なフーディーなど、クラシックの意匠とモダンな感性を自由にミックスしたデザインも2024年秋冬コレクションの特徴だ。なお、ほぼすべてのアウターにはユーティリティー性を持つポケットが装備されており、中には意図して配置場所をずらしたアウターも登場。メゾンの遊び心はポケットひとつにも表れる。
レザーウェアも大豊作
コレクション中盤ではカーキやペトロールブルー、パープル、パンプキンといった情感にあふれるカラーがニットにグラデーションを描きながら差し込まれ、大人の落ち着きに〈エルメス〉のポジティブなカラーパレットが加わる。伝統的なグレンチェック柄のセットアップも目を惹くが、不規則なパターンで構成されるアーガイル柄のセーターをはじめ、様々なカラーやグラフィックの登場も今シーズンのカギとなるようだ。
そして、コートからライダースジャケットに至るまで、〈エルメス〉2024年秋冬コレクションではレザーウェアが大豊作。「エルメス=レザー」を期待するファッション好きにとってはたまらないシーズンになりそうだ。いずれも世界最高峰のレザーを贅沢に使い、デザインはクラシックテイストを匂わせながら古臭くならないモダンさも両立。言うまでもなく何年にも渡って愛用すべき逸品だ。
メンズのコレクションでジュエリーが初登場 – オータクロアなどのアイコンバッグも
そして〈エルメス〉と言えば、バッグやジュエリー、アクセサリーも大いに気になるところ。2024年秋冬コレクションではカーフスキンのオータクロアやフールトゥといった伝説的なアイコンバッグが登場したほか、キャンバス製のトートバッグもランウェイを飾った。また、ホワイトゴールド製のネックレスなど、ハイジュエリーがメンズのコレクションで初めて登場したことも大きなニュースだ。ヴィンテージ・現行を問わず争奪戦の様相を見せる〈エルメス〉のジュエリーコレクションは、今や誰もが手に入れられるなら手に入れたい憧れの存在。コレクションで登場したジュエリーがそのまま市販化されるかどうかは分からないが、来たるべき秋冬シーズンではジュエリーにも大いに期待したい。
〈エルメス〉2024年秋冬コレクションは、クラシックなメンズファッションに敬意を払いながらもモダンな感性でアレンジしたデザインが多く登場した。トラディショナルなのに新しいという矛盾を非常に高い次元で成立させてしまう〈エルメス〉の底力を静かに見せつけられたと言ってもいいのではないだろうか。すべてのルックに共通するのは、洗練されたリッチさ。2024年に主流となるであろう “クワイエット ラグジュアリー” を世界最高峰のレベルで表現したようなコレクションは、同メゾンの熱狂的なファンならずとも必見だ。