
【インタビュー】レザーのスケートボードデッキやアパレルブランドを手掛ける ARAYA さんの独創的な世界と、その秘密
リアルスケーターやコアなアートファンも思わず二度見してしまうスケートボードデッキや、誰もがニヤリとするメッセージが込められたアパレルを制作するARAYAさんの頭の中はどうなっているのか?モノ作りにおける背景やこだわり、ストーリーを語ってもらった
〈DENHAM〉や「JOURNAL STANDARD」ともコラボを果たした個性派アーティスト
「この人絶対面白いだろうな」とARAYAさんのインスタグラムを初めて見た時に思った。自身の名を冠した〈ARAYA SK8(アラヤ スケート)〉では、様々なグラフィックや色彩であふれるスケートボードデッキを制作。パッと見ると木でできているようだけれど、なんとレザー製だ。革を重ね合わせ、手作業による削り加工などによって、他に類を見ないユニークな見た目に仕上げられている。アパレルブランド〈NAKA YORK CITY(ナカ ヨーク シティ)〉では、誰もが見たことのある「NYC(NEW YORK CITY)」の頭文字をもじり、不思議な脱力感とともにストリートマインドあふれるアイテムを展開。どちらのブランドでも、デザイナー ARAYAさんの個性が活かされたオンリーワンのモノ作りが魅力。世界的なデニムブランド〈DENHAM(デンハム)〉や日本のセレクトショップ「JOURNAL STANDARD(ジャーナルスタンダード)」ともコラボレーションを果たした。
本稿では、独創的な感性とデザインで唯一無二の世界を展開するARAYAさんにインタビュー。モノ作りのバックボーン、〈ARAYA SK8〉と〈NAKA YORK CITY〉のクリエイティブの秘密など、ここでしか聞けないお話をお届けする。



「大怪我をしても大好きなスケボーに関われる何か」に関われることを模索し生まれた、レザー製のスケートボードデッキ
まずはARAYAさんのバックボーンについて教えてください。学生の頃からクリエイティブなことに興味があったのですか?子供の頃に夢中になったことや、好きだったものなどはありますか?
子供の頃は絵を描くのが大好きでした。特に夢中だったのは落とし穴を作ることで、何度も姉を落としまくってよく怒られていました(笑)。落とし穴のクオリティに関しては真面目に語れます。中学生の頃から『MEN’S NON-NO(メンズノンノ)』や姉が持っていた『CUTiE(キューティ)』といった雑誌を読んでいて、中学1年生の時は裏原宿系ブランドの洋服が買えなかったので、〈GOODENOUGH(グッドイナフ)〉の「g」ロゴをステンシルしてTシャツにスプレーをして作ったり、映画『Back to the Future(バック・トゥ・ザ・フューチャー)』に出てくるスケボーをDIYで作ったりしてました。
レザークラフトがメインの〈ARAYA SK8〉とアパレルブランドの〈NAKA YORK CITY〉を始める前は衣装制作をされていたとのことですが、どんなものを制作されていましたか?
20代後半の衣装制作の時期は小劇場や美容室のヘアショーのデザイン、パターン制作、縫製を一人で制作していました。かなりアバンギャルドなデザインでしたね。大変な時期でしたが、その経験のおかげで今があります。
〈ARAYA SK8〉のレザーで作られたスケートボードは衝撃的でした。レザーを素材にするなら一般的な革小物やアパレルを作るという選択肢もありますが、スケートボードをレザーで作ろうと思ったのはなぜでしょうか?
18歳の時にスケボーをしていた時に靭帯損傷で入院が必要な手術をしたんですけど、30歳になってからスケボーを再開したんです。でも36歳で足首にボルトを入れる手術でまた入院!スケボーをやる度に大怪我をするのが怖くなって(笑)。でも、スケボーをしないでスケボーに関われる何かはないかな?と考えて浮かんだアイデアが、革で作った偽物のスケボーを作ることだったんです。曲がってできていたりするので実際は滑ることができないんだけど、自分の経験からでしか作れないアプローチかなと思いました。それと、30歳の頃にイタリアの「LINEA PELLE(リネアペレ)※」で2位を受賞したこと、同時期に革のOEMの会社で働かせていただいた経験が、後の革とスケボーの融合に繋がっています。
※LINEA PELLE(リネアペレ)
イタリアのボローニャで年に2回開催される、世界最大級の皮革素材の展示会。アパレルや皮革関連のデザイナー、バイヤーが世界中から集まり、最新の素材やトレンドをチェックする。
イタリアのボローニャで年に2回開催される、世界最大級の皮革素材の展示会。アパレルや皮革関連のデザイナー、バイヤーが世界中から集まり、最新の素材やトレンドをチェックする。






〈デンハム〉とのコラボではライダースにスケボーを融合したジャケットを制作
教えられる範囲で結構ですので、どんな種類のレザーを使いどのように作っているかや、制作上の苦労、難しい点などがあれば教えてください。
革はすべて廃材を利用しています。革のOEMの会社で働いていた頃に大量の革の廃材を処分されていて。人間の都合で食べ物や商品になって、都合の良いところだけは利用され、都合の悪いところは処分される…廃材も命なのになと思っていました。自分が廃材を作品に変えることで牛が成仏できるかもと思ったのがきっかけです。また、ベースになる素材が廃材なので、色々な種類のレザーを使って作品作りをしています。制作上の苦労は、本物のスケートボードデッキに見えるようにひたすら加工やエイジングを繰り返していて。本物と同じバイブスまで近づけるエイジング作業に一番神経を使っています。そこが難しいところですね。
〈ARAYA SK8〉では個人からのオーダーメイドでもスケートボードを制作されています。オーダーによって千差万別かと思いますが、どういうことを考えながらデザインされているのでしょうか?
オーダーで大切にしていることは、オーダーいただいたお客様の想いやその方のマインドやあり方、そしてその方の好きな音楽やカルチャーなどをディスカッションしてから制作させていただいています。
ライダースがベースのものや〈CONVERSE〉ALL STARがベースのものなど、見たことのないデザイン・作りのスケートボードがたくさんあります。ご自身で印象に残っているもの、これは凄かった!大変だった!と思う作品があれば教えてください。
〈デンハム〉とのコラボレーションをした、ライダースをベースにしたモノが一番エキサイティングな経験でした。初日の打ち合わせで、ダメ元で革のスケボーを〈デンハム〉のライダースジャケットの背中に縫い付けるアイデアを提案したところ、「やりましょう、7型作りましょう」と言われて(笑)。決まったことに痺れました(笑)。
大変だったのは、ライダースは洋服として着るものなので、重いレザーでは着用が困難になるんです。普段は牛革を使用しているんですけど、軽量なラムレザーのみで制作しました。軽くする作業が大変でしたが、結果的に良いモノができて安心しました。すべては〈デンハム〉のボスの根岸さんとスタッフの皆様のおかげです!
大変だったのは、ライダースは洋服として着るものなので、重いレザーでは着用が困難になるんです。普段は牛革を使用しているんですけど、軽量なラムレザーのみで制作しました。軽くする作業が大変でしたが、結果的に良いモノができて安心しました。すべては〈デンハム〉のボスの根岸さんとスタッフの皆様のおかげです!







「NYC」=「NAKA YORK CITY(仲良くCITY)」
〈デンハム〉や「ジャーナルスタンダード」のようなメジャーブランド/ショップとコラボレーションをした際のお話をもっと聞かせてください。また、こことやってみたいなと思うブランドやショップ、アーティストなどはありますか?
〈デンハム〉、「ジャーナルスタンダード」、〈John Bull(ジョンブル)〉とコラボレーションできたことは、絶望感を感じていた学生時代の頃の自分に「40歳で急にメジャーブランドとコラボしてハワイで展示会もしてるぞー!ネバーギブアップ!」って言ってあげたいです(笑)。
やってみたいのは、やっぱり〈COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)〉ですね。〈ARAYA SK8〉でレザー製のスケートボードデッキを作ってみたいです。そして、「DOVER STREET MARKET(ドーバー ストリート マーケット)」の全店舗で〈ARAYA SK8〉のアートディスプレイ提案で契約したいのも学生の頃からの目標です。落合翔平さん、横尾忠則さん、五木田智央さん、ジョージ中村さんといったアーティストと絵のコラボをしたスケートボードデッキの展示もできれば感無量です。
やってみたいのは、やっぱり〈COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)〉ですね。〈ARAYA SK8〉でレザー製のスケートボードデッキを作ってみたいです。そして、「DOVER STREET MARKET(ドーバー ストリート マーケット)」の全店舗で〈ARAYA SK8〉のアートディスプレイ提案で契約したいのも学生の頃からの目標です。落合翔平さん、横尾忠則さん、五木田智央さん、ジョージ中村さんといったアーティストと絵のコラボをしたスケートボードデッキの展示もできれば感無量です。
アパレルブランドは割と真面目なテンションでデザインする方が多い中、〈NAKA YORK CITY〉は誰もが見慣れた「NYC」の文字を独自にアレンジするなど、ARAYAさんのユニークなセンスが何とも言えない味を出しています。〈NAKA YORK CITY〉ってどんなブランドなんでしょうか?
〈NAKA YORK CITY〉が生まれたのは、昔着ていた古着のタグを友人が見て「なんだ、メイドインチャイナか。俺アメリカもんしか着ないだよね」と言われたのがきっかけで。「USA」や「NYC」と書かれていたらこの人ざわつくんだと思ったんです。「NYC」のロゴTシャツを作って、よく見たら「NAKA YORK CITY(仲良くCITY)」になっていたら笑いが起こってほっこりできるかなと。あと、人と仲良くすることって意外と難しいので、まずは自分の機嫌は自分で取る、自分自身と仲良くするという裏テーマもブランド名に込められているんです。




いつかは自由の女神と「仲良くCITY」を夢見ながら
よく見ると「NAKA YORK CITY(仲良くCITY)」なのは凄く面白い発想ですよね(笑)。ちなみにモノ作りをする際はどんなことを大切にしていますか?
たくさんモノがあふれている世の中なので、発見や驚きや問いなど、世の中の忙しい人の脳みそがポジティブになるような、目が覚める作品作りを心掛けています。
〈ARAYA SK8〉と〈NAKA YORK CITY〉では、今後どんなアイテムを作っていきたいですか?
〈ARAYA SK8〉では巨大なスケートボードデッキですかね。SNSで見るといつもの作品に見えつつ、実は奈良の大仏ぐらいでかいみたいな作品を作ってみたいです!あとはニューヨークの自由の女神が持っている本を〈ARAYA SK8〉の巨大なデッキに差し替えて、人生の思い出作りをしてみたいです。その状態の自由の女神と一緒に写真を作るのが夢ですね(笑)。〈NAKA YORK CITY〉でも自由の女神用に作った巨大なTシャツを着せて、世界中の人と「仲良くCITY」ができたら嬉しいです。