現代に甦った伝説のブランド – BUCOのライダース

かつて実在した同名ブランドを〈リアルマッコイズ〉が完全復刻。それだけで世界最高のレザーウェアであることが約束されているようなものだ。ハマると怖い〈BUCO〉のライダースをピックアップ。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : BUCO official site

極上の経年変化

10万円前後で良い品質のライダースジャケットを購入できる今の時代に、わざわざ〈BUCO〉に大金を支払う理由はあるのだろうか?そう自問するといくつも正当化できる理由が頭に浮かんだ。
まずは素晴らしい経年変化をたっぷりと味わえることだ。フルタンニン鞣しであろうとクロム鞣しであろうと、BUCOのレザーは極上のエイジングに進化する。理想を言えばフルタンニン鞣しを選ぶ方がより素晴らしいエイジングを楽しめるが、革の硬さや重みなどが違うので好みで選んで問題ない。ただ、事前知識がない状態で試着もせずにフルタンニン鞣しのホースハイドを選ぶのはかなり危険な行為であると認識した方が良いだろう。最初の数週間はまるで拘束具のように体の自由が奪われ、もしかしたらライダースジャケットが嫌いになってしまうかもしれない。
「痛みは一瞬。誇りは永遠」という格言がもっとも当てはまるライダースが〈BUCO〉のホースハイドかもしれない。それくらいタフであることで知られているが、着込んだ後の経年変化は惚れ惚れするような表情に変化するのだ。


フルタンニン鞣しのホースハイド、ピグメントフィニッシュというトリプルコンボのJ-22。ダブルライダースの王道デザインを楽しめる。ウール100%のライニングをインナーに備えるため、インナー次第では真冬でも着用可能。

襟にムートンが付くJ-24L。フルタンニン鞣しのホースハイド、ピグメントフィニッシュ。襟元に暖かなムートンが付くだけで全体的な雰囲気がかなり変化する。ラギッドで男臭いスタイルだ。

意外なほど合わせやすいのも〈BUCO〉のライダースの魅力

〈BUCO〉のライダースは素材も作りもハードなので、リアルバイカーのためのブランドという印象を持っている方も多いはず。実際バイカーたちからの支持も強いブランドではあるが、ストリートでも着やすいことはあまり知られていないのではないだろうか。
確かにホースハイドはシープやラムよりも比べ物にならないくらい硬くて重い。「拘束具」という例えがあながち大げさではないことは経験者ならご理解いただけるだろう。それでも〈BUCO〉のライダースをおすすめする理由は、カッコ良くてオシャレだから。オーセンティックなデザインは飽きることがなく、時代も年齢も選ばない。30歳で手に入れて60歳になっても着れるのが〈BUCO〉なのだ。オシャレとは最新の流行を指す場合もあるが、同じモノを長くカッコ良く着こなせることも指すと思っている。
肩幅や身幅、アームホールなどが現代的に程よくシェイプされている点も見逃せない。この手の復刻系ブランドはシルエットまで古いまま甦らせることが多々あるけれど、〈リアルマッコイズ〉はそんな野暮なことはしなかった。
〈BUCO〉のライダースはダブルもシングルも美しいシルエットで構成されている。ただ細いのではなく、本来持っていたオーセンティックなデザインをシェイプして違和感がないレベルにしているところがさすがだ。美しいシルエットは特にストリートで着る際には不可欠な要素だ。


襟元が小さく、センターベルトの幅が狭いためややスッキリとした印象のJH-1。J-22やJ-24はハード過ぎるけどダブルを着たい人におすすめ。どことなく英国のライダースを彷彿させる雰囲気も魅力。

「BUCOのひとつの完成形」とブランド自身が認めるJ-24。クラシカルなルックスと職人の高いレベルの仕事を味わえる極上のライダースだ。一目でBUCOと分かるDポケットやタロンジップなど、アイコニックなデザインやパーツを堪能できる。

奮発する価値があるブランド

〈BUCO〉のライダースジャケットは例外なく高額だ。これは認めざるを得ない。シングルライダースはかろうじて20万円を下回るモデルが存在するものの、ダブルライダースは基本的に25万円を超えるプライスが掲げられている。これを暴利と取るかは人によって様々だろう。
例えば〈ロレックス〉の腕時計には世界最高峰の品質と素晴らしいルックスがあるが、最低でも数十万円、もしくはそれ以上の金額を支払う必要がある。時計に興味がない人には理解できない金額かもしれないが、〈ロレックス〉の価値を本当の意味で理解している人は暴利とは思わない。
多くの革キチやファッション好きが〈BUCO〉のライダースを憧れの一着と捉えるのは(私もそうだ)、このブランドが作るアイテムは流行り廃りに左右されず、どれも本物の良さを持っているからに違いない。〈BUCO〉よりも高額なライダースジャケットも世の中にはいくつも存在するが、それらを30年間愛用できるとは限らない。客観的に見て〈BUCO〉は奮発して手に入れる価値があるブランドだと言えるだろう。


シングルライダースの定番モデルであるJ-100。ブラックとはひと味違う、こなれたラギッドさのあるブラウンカラーを選ぶのも面白い。着込むことで色味も変化していく。

「CYCLE PSYCHO」と名付けられたJ-100。60年代に行われたバイクの耐久レース向けに作られたカスタムモデルを現代に復活させたモデルだ。熟練の職人がひとつひとつ手作業で制作する。

一生物になり得るライダースジャケット

飽きる要素がない完成されたデザイン。職人による確かな作りと品質。素晴らしいレザー。着込めば着込むほどこなれた表情に変化していく経年変化。そしてファッションとしても成立する柔軟性。〈BUCO〉のライダースは高額であること以外の欠点は見当たらない。たかが革ジャンに20数万円も支払うなんて馬鹿馬鹿しい…そう思う気持ちはよく理解できる。しかし、これほど完成度の高いライダースが他にどれくらいあるか、そして一度購入したら何年着用できるかを想像してみてほしい。5年?10年?30年?もしかしたらもっと長い間着ているかもしれない。
当然のことながら長く着るほど初期投資をペイできる計算になるので、もしオーナーになる場合は老人になっても着続ける気概でいるべき。素晴らしいのは、〈BUCO〉のライダースは特別なことをせずとも自然にエイジングし、かつ10年単位で普通に着続けられるタフさもあることだ。どんなアイテムでもいつかは朽ちていくものだが、私やあなたが生きている間はきっと何事もなく着続けられることだろう。
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ITEM CREDIT
  • BUCO:J-22 / J-24L / JH-1 / J-24 / J-100 / J-100(CYCLE PSYCHO)