Still exciting watch TUDOR Big Block OYSTERDATE CHRONO TIME

TUDOR クロノタイムが今もっとも狙うべきヴィンテージ・クロノグラフである理由

〈Rolex〉の息吹きを色濃く残しながらオリジナルの意匠を堪能できる、時計史上的にも稀な隠れ傑作モデル。それが〈TUDOR〉OYSTERDATE CHRONO TIME。本稿は個人的にクロノタイムファンである筆者の憧れと感想も交えながら、なぜ今この時計を「買うべき」と勧めるのか、その理由を説明する。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : BULANG & SONS

「ロレックス・バブル」に引っ張られる形でヴィンテージウォッチが軒並み高騰

10年ほど前までせいぜい30万円も出せば購入できた〈TUDOR(チューダー)〉OYSTERDATE CHRONO TIME(オイスターデイト・クロノタイム)が、製造された年代により相場は変わるものの、人気の高いヴィンテージモデルは軒並み100万円を超える市場相場にまで上昇した。時計に詳しい方には説明不要だが、これは〈Rolex(ロレックス)〉の爆発的とも言える人気の高まりに引っ張られた結果となる。
1960~80年代に製造されていた〈ロレックス〉DAYTONA(デイトナ)SUBMARINER(サブマリーナ)といった人気モデルの古い個体が数千万円~モノによっては1億円を優に超える天文学的なプライスで売買されるようになり、それに反応する形でスイス製時計メーカーがかつて製造していたヴィンテージウォッチの価値も見直されることになった。その最たるモデルが〈OMEGA(オメガ)SPEEDMASTER PROFESSIONAL(スピードマスター・プロフェッショナル)や〈HEUER(ホイヤー)AUTAVIA(オータヴィア)といった伝説的なモデルだ。
そして、〈ロレックス〉と直接的な関係を強く持っていた時代の〈チューダー〉製クロノグラフも大きく市場相場が上昇。1970年代初頭に誕生した〈チューダー〉製クロノグラフの初代モデル(型番は7000番台)、通称「ホームプレート」は数百万円の価値が与えられ、それに続く後継モデルも軒並み大きく市場価値が変動することになる。「ホームプレート」や2代目のモンテカルロも本当に本当に素晴らしい時計だけれど、本稿では第3世代である「Big Block(ビッグブロック)」オイスターデイト・クロノタイムにフォーカスしよう。

TUDOR Big Block OYSTERDATE CHRONO TIME
TUDOR Big Block OYSTERDATE CHRONO TIME

TUDOR Big Block OYSTERDATE CHRONO TIME
TUDOR Big Block OYSTERDATE CHRONO TIME

名機バルジュー7750を搭載

第3世代のオイスターデイト・クロノタイムの最大の魅力は「これぞスポーツウォッチのクロノグラフ!」と喝采を送りたくなる完成されたデザインだろう。オイスターデイト・クロノタイムのインダイヤルは〈ロレックス〉デイトナを45度傾けた配置になっており、その配置バランスとディテールはまさにクロノグラフとして王道を行くルックスに仕上がっている。見た目上のデイトナとの明らかな違いは、文字盤上にクイックセット日付機能が装備されていること。心臓部のValjoux(バルジュー)7750が日付表示機能を備えていたことで実現した重要なディテールだ。
バルジュー7750は1973年の誕生から数十年が経過した今の時代でも汎用ムーブメントとして利用されることのある傑作で、かつては〈ロレックス〉デイトナにも搭載されていた。人気の秘訣は確かな精度とカスタマイズ性およびメンテナンス性の高さ。裏蓋側にクロノグラフ機構を組み込んだシンプルかつ省スペースな設計は扱いやすく、低コストで修理できるカム式駆動であることも時計職人からの評価が高い理由だ。バルジュー7750は〈チューダー〉以外にも様々なスイスブランドに採用されてきたが、このムーブメントなくしてオイスターデイト・クロノタイムは存在しなかったと言っても過言ではないだろう。
また、日付表示機能を備えていることからムーブメント自体に厚みがあるため、それを収めるためのケースがこの年代の時計にしては大きく厚みのある形状になったことも特徴のひとつ。オイスターデイト・クロノタイムは海外では「Big Block(ビッグブロック)」、日本では「カマボコケース」という通称がある。その通称通り、金属の塊であることを強く感じる分厚いケースがもたらすいかにもメンズライクなケース形状も、この時計の魅力のひとつだ。〈ロレックス〉デイトナに10年以上も先んじて自動巻きムーブメントを搭載していたこと、タフで男らしいケースのボリューム感が〈ロレックス〉Deep Sea(ディープシー)が登場するまでは唯一無二の存在感を放っていたことは、〈チューダー〉の先進的な開発能力の高さを物語っている。

TUDOR Big Block OYSTERDATE CHRONO TIME
TUDOR Big Block OYSTERDATE CHRONO TIME

TUDOR Big Block OYSTERDATE CHRONO TIME
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〈ロレックス〉純正パーツが使われている点も「買い」ポイント

〈チューダー〉が〈ロレックス〉と密接な関係性を持っていることはよく知られているが、オイスターデイト・クロノタイムが作られていた時代は現在よりもずっとその関係性が強かったことも「買い」のポイントのひとつ。1970~80年代前半まではリューズや裏蓋などに〈ロレックス〉純正のパーツが使われていた。〈ロレックス〉製ではないのに〈ロレックス〉のパーツが使われていた時計はごく一部の例外を除いてあり得ない仕様であり、その珍しさもコアな時計好きから愛される魅力になっている。
ちなみにヴィンテージのオイスターデイト・クロノタイムには3種類のバリエーションが用意されている。プラスチック製のベークライト・タキメーターを備えるRef.9420、ダイバーズウォッチを彷彿させる双方向ベゼルのRef.9421、そしてもっとも金属的な塊感を感じるスチールタキメータースケールベゼルのRef.9430だ。ベゼルの種類によって顔立ちの印象が大きく異なるものの、これはひとりひとりの好みで決めてしまいたいところ。1980年代後半以降のモデルも同じベゼルのラインアップで継続して生産されていたが、高年式のモデルは〈ロレックス〉製のパーツは使われていないので注意されたし。

TUDOR Big Block OYSTERDATE CHRONO TIME
TUDOR Big Block OYSTERDATE CHRONO TIME

何十年経っても色褪せない完成されたスタイルを楽しめる時計

全体を通して、オイスターデイト・クロノタイムには欠点や死角が見当たらない。唯一挙げるとすれば「ビッグブロック」という呼称が付くほどのボリューム感がToo muchだと感じる人はそれなりに多いだろう。しかし、それさえもこの時計のアイデンティティのひとつであることは言うまでもなく、実際これほど完成されたデザインのクロノグラフはごく珍しいと言っていいはず。〈ロレックス〉直系のエッセンスを強く感じさせながらオリジナリティもしっかり確立し、数十年経った今でもメインの時計として毎日愛用できることは、間違いなくアドバンテージとなる。100万円以下で手に入るヴィンテージ・クロノグラフとしてはもっともおすすめしたい時計のひとつだ。
端正なルックスなのでどんな系統のファッションに合わせても成立する点も嬉しい。ストレートなアメカジはもちろん、ストリート系、モード系、スーツスタイルなどテイストを問わず馴染んでくれるし、程よく上質さをアピールしてくれるはず。そういった点においては〈オメガ〉スピードマスター・プロフェッショナルや〈ホイヤー〉のヴィンテージ・クロノグラフと近しい世界観を持っている。時代や流行の変化の影響を受けることなく普遍的な魅力を保ち続ける点においても、〈ロレックス〉デイトナをはじめとしたトップレンジのスポーツウォッチに肩を並べる強い魅力がある。
ヴィンテージウォッチの世界的な相場が今後どのように変動していくかは誰にも分からないが、もしオイスターデイト・クロノタイムがもっともお気に入りの時計のひとつであれば、今のうちに買っておくことをおすすめしたい。絶対的な価値が下がることのない「間違いない」時計であり、この時計ならではの魅力はこれから何十年経っても色褪せることがないと思えるからだ。もしかしたら、20年後には現在の倍以上の相場に化けているかもしれない。
LIVE IN RUGGEDがお届けする〈チューダー〉の記事はこちら、〈ロレックス〉の記事はこちらから。
〈ロレックス〉や〈チューダー〉を日々愛用されている@mazik_mine さんのインタビュー記事は時計好き必見!
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