Richard Mille RM UP-01 Ferrari The thinnest watch in the world

Richard Mille が見るからに折れてしまいそうな世界最薄時計の開発に成功

まさか「不注意による折損は補償の対象外です」とか書いてあるんだろうか…。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : Richard Mille

厚さなんと1.75mm!

2001年に〈Mauboussin(モーブッサン)〉のウォッチ部門およびジュエリー部門のCEOを務めたRichard Mille(リシャール・ミル)によって創業されたスイスの高級時計ブランド〈Richard Mille(リシャール・ミル)〉が世界最薄時計、RM UP-01 Ferrariを完成させた。
文字盤からケースバックまでわずか1.75mmという驚異的な薄さを誇るRM UP-01 Ferrariは、以前LIVE IN RUGGEDでも報じた〈BVLGARI(ブルガリ)〉のOcto Finissimo Ultra(オクト・フィニッシモ・ウルトラ)をわずかに上回る薄さを実現。オクト・フィニッシモ・ウルトラは厚さ1.8mmなので、RM UP-01 Ferrariは0.05mm薄い時計ということになる。
モデル名にある通り、本モデルはイタリアを代表するスーパーカーメーカー〈FERRARI(フェラーリ)〉との関係性を直接的に表すモデル。〈フェラーリ〉は市販車開発のフィールドはもちろん、FORMULA 1(フォーミュラ1)をはじめとしたモータースポーツの世界でも常にイノベーターであり続けている稀有な自動車メーカーだ。世界屈指の開発能力とアイデア、培ってきた知見、そして世界中から憧れを集めるブランドとしての世界観など、〈フェラーリ〉が世界に与えてきた影響力は計り知れない。RM UP-01 Ferrariは、2021年に長期的なパートナーシップを結んだ〈リシャール・ミル〉と〈フェラーリ〉の関係性を祝福するモデルであり、両社による挑戦心と革新性を時計というフィールドで具現化したアイテムと言えるだろう。
とはいえ、写真と1.75mmという目を疑う実寸を見て「折れないんですかね?」と思ってしまうのは自然な反応。確認したところ、具体的な耐衝撃性や耐久性に関しては明記されていないものの、「極限まで薄さにこだわったとしても、他のモデルと同じように、テストをクリアする必要がありました。絶対的な薄さを追求するためには、コンセプトウォッチではなく、着用者の日常生活に密着した時計を提供する必要があったのです」という文言が公式声明として記載されている。実際、本モデルを開発するにあたり剛性の確保についてはもっともプライオリティの高い事項として開発が進められたようだ。〈フェラーリ〉チームとの共同作業により、何年もかけて何十ものプロトタイプを作り、6,000時間以上の開発とテストを経てやっと完成したという記載もある。
ウルトラフラットウォッチという挑戦を実現するためには歯車と針を重ねた従来のムーブメントを使うことができなかったため、ムーブメントとケースを共生させ、それぞれが必要な剛性を確保することで重ねられないものをより広い面積に分散させるという画期的な設計を採用。それでも薄すぎる=剛性不足の懸念点があるため、裏蓋が地板を兼ねる構造ではなく、ムーブメントがケースに組み込まれた伝統的な構造を維持することにこだわって開発されたのだという。

Richard Mille RM UP-01 Ferrari The thinnest watch in the world
Richard Mille RM UP-01 Ferrari The thinnest watch in the world

Richard Mille RM UP-01 Ferrari The thinnest watch in the world
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〈オーデマ・ピゲ〉のエンジニアも加わり共同で開発
超薄型ながら剛性が高く、高精度のムーブメント作りを実現

さらに地板とブリッジに剛性を確保するために生体適合性があり高い耐食性を備えたグレード5のチタンを採用。合金の組成的には素材が機械に及ぼす特性がさらに強化されるようにグレード5チタンが90%、アルミニウムが6%、バナジウムが4%で生成されている。この合金は高剛性と耐腐食性、精密性が求められる航空宇宙産業や航空産業、自動車産業でも多用されているのだとか。RM UP-01 Ferrariの地板はスケルトン加工が施されているのだが、必要な強度条件を確保するために地板単体でも検証試験が重ねられ、結果としてCal.RMUP-01は5,000g以上の加速度に耐える強度を実現した。
RM UP-01 Ferrariの開発にあたって〈Audemars Piguet(オーデマ・ピゲ)〉のエンジニアも加わり、共同でチタン製のテンプを備えた新しいタイプの脱進機を開発したことも重要なトピックだ。特許を取得した新しいウルトラフラット脱進機の開発により、ムーブメントの厚みを大幅に抑えながら一般的なスイス式アンカー脱進機と同等の安定性を確保することを実現。長期間にわたって最適なクロノメーター精度を提供できるほどの精度を備え、正確で再現性の高い機械作動を可能にした。しかも、パワーリザーブは約72時間という長さというから恐れ入ってしまう。こんなに薄いのに!

Richard Mille RM UP-01 Ferrari The thinnest watch in the world
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Richard Mille RM UP-01 Ferrari The thinnest watch in the world
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超高級時計の代表的ブランドが実現した「世界最薄のベンチマーク」

文字盤を覆うのは厚さわずか0.2mmの2枚のサファイアガラス。数字だけ見ると何とも心細くなってしまうけれど、1気圧(10m)防水を備えている。とはいえ、この時計を身に着けたまま水仕事をしたり、ましてやプールで泳ぐようなことは絶対に避けなければならない。
高い技術力と開発能力を持つ〈リシャール・ミル〉であっても、この時計の開発は非常に困難で時間も手間も掛かる作業だったとか。先に述べたようにケース設計から素材選び、ムーブメントの開発など、あらゆる点で既存の時計製作の常識を横に置く必要があったことは想像に難くない。まさに「一枚の薄い板」と表現したくなる驚異的な薄さは、時計史上に残る偉業。今後他ブランドが最薄への挑戦に乗り出すかは分からないが、絶対的なベンチマークとして君臨するはずだ。
〈リシャール・ミル〉RM UP-01 Ferrariは世界150本限定で、気になる価格は188万8000ドル(約2億5千万円)と予想されている。都内の一等地に一戸建てを建設できるレベルの価格だが、世界最薄の〈リシャール・ミル〉であればそれも納得できるかも?気になる方は〈リシャール・ミル〉公式サイトをチェックいただきたい。
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