1991 Lamborghini LM002

究極の 1%er を楽しむ – ラグジュアリーSUVの始祖、ランボルギーニ LM002

世界で一番ロックなSUV?


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : Sotheby’s

〈Lamborghini〉初の4輪駆動モデルのターゲットはアメリカ陸軍だった

東京の街中を歩いていると高級SUVに遭遇する機会が数百回はある。目立つのは〈Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)〉G-Classや〈LEXUS(レクサス)〉LXやRX、そして〈LAND ROVER(ランドローバー)〉レンジローバーあたりだろうか。特に〈メルセデス〉Gクラスと〈レクサス〉は抜きんでて多い印象が強い。
それらは間違いなく良いクルマであり、オーナーが求める高級感やステータス、乗り心地などをほぼ完全に満たしてくれる名モデルでもある。それは理解しつつ、本稿では少しへそ曲がりの方…普通では物足りないと感じ、クルマに個性や強烈な楽しみを求める方に一台のクルマをレコメンドしたい。〈Lamborghini(ランボルギーニ)〉LM002である。
生粋の〈ランボルギーニ〉ファンかスーパーカー好きでなければLM002というモデル自体をご存じないかもしれない。実際、地を這うようなスーパーカーを作る〈ランボルギーニ〉がこんな無骨なSUVをかつて製造していたとは、今考えても不思議な事実でもある。
〈ランボルギーニ〉LM002は1977年にサンタアガタ・ボロネーゼに本拠を置く〈ランボルギーニ〉本社が、よりニッチな自動車の可能性について検討し始めたことから始まった。元々は一般市場向けではなくアメリカ陸軍が最大のターゲットだったという。巨大なエンジンを搭載し、起伏に富んだ路面でもパワフルに突き進む〈ランボルギーニ〉初の4輪駆動車(当時はSUVなどという呼び名はなかった)は、性能的には申し分なかったものの、V12エンジンをリアに配置するというエキゾチックなレイアウトが起因で、アメリカ陸軍が興味を示すことはなかった。
しかし当時の〈ランボルギーニ〉のプリンシパルであるパトリック・ミムランは荒削りの試作車をゴミ箱送りにはせず、1981年のジュネーブ国際モーターショーにLM001というコンセプトカーを発表。多くのクルマ好きの注目を集めたものの、この時点ではリアエンジン配置によるハンドリングの悪さとインテリアスペースの狭さも際立っていた。

1991 Lamborghini LM002
1991 Lamborghini LM002

1991 Lamborghini LM002
1991 Lamborghini LM002

1991 Lamborghini LM002
1991 Lamborghini LM002

現在に続くラグジュアリーSUVの始祖

そこで、当時〈Maserati(マセラティ)〉のデザイナーを務めていたジュリオ・アルフィエーリにデザインの修正を依頼。アルフィエーリはCountach(カウンタック)と同じV型12気筒エンジンをフロントに配置する大胆な変更を成功させ、車両全体の前後重量配分を大幅に改善。それに伴いハンドリングも劇的に良くなったようだ。また、室内のレイアウトも改善し6人のパッセンジャーが乗員できるようにアップデートされた。
何年もの開発期間を経て、1986年のブリュッセルモーターショーで〈ランボルギーニ〉LM002を発表。贅沢なレザー製インテリアとエアコン、(当時としては)素晴らしい音質のオーディオシステムといった快適装備を持ち、パワフルなエンジンで悪路も踏破できるというコンセプトを持つLM002は、SUVという言葉が生まれるはるか前にその方向性を定めた革新的なモデルだったのだ。

1991 Lamborghini LM002
1991 Lamborghini LM002

1991 Lamborghini LM002
1991 Lamborghini LM002

1991 Lamborghini LM002
1991 Lamborghini LM002

1991 Lamborghini LM002
1991 Lamborghini LM002

究極の1%er(ワンパーセンター)

1991年製ながら、70~80年代の空気感を身にまとう角ばったデザインにも注目したい。定規で計ったように直線的な各所のボディラインにはLM002よりも前に誕生した偉大なスーパーカー…カウンタックと共通する意匠が見え隠れすることが分かるだろう。大胆に張り出したシャープなオーバーフェンダーや、やや前傾姿勢の攻撃的なポーズ、シンプルなのに印象に残りやすいフロントとリアのライト形状などは、まさに当時の〈ランボルギーニ〉ならではのデザイン。いかにもパワフルで全身に力がみなぎっているようなこの力強さ!現代のクルマが失ってしまった過去の美徳が凝縮されたようなクルマだ。
総生産数が約300台ということもあり、〈ランボルギーニ〉LM002を目にする機会は極端に少ない。スーパーカーメーカーとしての〈ランボルギーニ〉が好きな方の意識の中にも、LM002がウィッシュリストに入ることはまずないだろう。カウンタックやディアブロ、それに続くムルシエラゴやアヴェンタドールといった〈ランボルギーニ〉の過去のフラッグシップモデルよりもはるかにマニアックな選択。まさに1%er(ワンパーセンター)なクルマだ。
本稿で紹介した〈ランボルギーニ〉LM002は世界的なオークション「Sotheby’s(サザビーズ)」にて競売に掛けられ、368,000ドルで落札された極上車。恐らく「サザビーズ」ではなくても実際に購入しようとすれば5,000万円前後の金額が必要と思われるが、唯一無二のSUVに惹かれた方は巨大な猛牛を飼育するのはいかがだろうか?
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