1958 Rolex Explorer I Ref.6610 White Dial

世界に1本?謎に満ちたホワイトダイヤルのロレックス・エクスプローラーI

〈ROLEX〉の気まぐれか、何かの間違いでできたのか、プロトタイプなのか?黒文字盤しか存在しないはずのエクスプローラーI に、ホワイトダイヤルモデルが存在していた。


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : HODINKEE

偽物では?と思ってしまった

今から10年前の2013年、世界最古のオークションハウスである「Christie’s(クリスティーズ)」にホワイトダイヤルの〈ROLEX(ロレックス)〉EXPLORER I(エクスプローラーI)が出品された。〈ロレックス〉好きであればご存じの通り、エクスプローラーI に黒以外の文字盤は存在しない。長い年月を掛けて経年変化を起こし、ブラウンチェンジした個体はいくつも存在しているものの、製造時に黒以外のモデルは(少なくとも公式には)この世に存在していないのだ。
だから、時計好きがこのエクスプローラーIを見ると「偽物だ!」と真っ先に思うはず。そうでないことは「クリスティーズ」に出品されたという事実が証明している。

1958 Rolex Explorer I Ref.6610 White Dial
1958 Rolex Explorer I Ref.6610 White Dial

「Ref.6610=初代エクスプローラーI 説」

この珍しすぎる〈ロレックス〉エクスプローラーI Ref.6610 は、ヴィンテージウォッチ市場において非常に安定した人気を保っている名機、エクスプローラーI Ref.1016 の前身となるモデル。クロノメーター仕様となる世界初の両方向回転巻き上げムーブメント、Cal.1030 を搭載し、熱心な時計愛好家たちの中には Ref.6610 こそがエクスプローラーI の初代モデルだと唱える人もいる。特徴的な 3、6、9 のダイヤルや短針のベンツ針を装備するなど、デザイン的には今日に通じるシンプルなデザインがほぼ完成されていることも「Ref.6610=初代エクスプローラーI 説」が存在する理由だ。

秘密主義で謎めいた〈ロレックス〉ならではのウルトラレアモデル

純白の文字盤を装備するエクスプローラーI がこの個体だけなのか、それとも他にも存在するのかはまったくの謎だが、少なくとも〈ロレックス〉は過去にホワイトダイヤルのエクスプローラーI を製造したことは認めていないという。ということは、この摩訶不思議な時計は何かしら目的があって作られたプロトタイプなのか?それとも「白もありだよね」という気まぐれが生み出したイレギュラーモデルなのか?真相は不明だが、「クリスティーズ」は本モデルをオークションに出品するにあたり、これが本当に純正の〈ロレックス〉なのか、パーツ類も含めて完全にオリジナルなのかをかなり入念に確認したという。だから、にわかには信じがたいがこれは正真正銘本物でオリジナルの〈ロレックス〉エクスプローラーI のホワイトダイヤルなのだ。
秘密主義を貫く〈ロレックス〉には時折「一体なぜこんなモデルが?」と頭を抱えそうになる時計が発見される。しかし、その謎めいた部分もこのブランドの魅力のひとつ。今後二度と発見されることはないかもしれないが、謎は謎として楽しむのが〈ロレックス〉大好き人間たるゆえんだったりもする。
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ちなみにトロピカルダイヤルに変化したエクスプローラーI は手に入れることができる。
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