MAD Paris GMT MASTER II

「吊るし」では満足できないあなたへ – MAD Parisのカスタムロレックス GMTマスターII

どうせ高いお金を出すなら他の人とは絶対に被らないワンアンドオンリーな逸品を手に入れるのはどう?


Written : LIVE IN RUGGED
Photo : FARFETCH

謎に満ちたカスタマイズウォッチブランド

数年前から慢性的な在庫不足が指摘されていた〈ROLEX(ロレックス)〉。あまりの人気っぷりに正規ブティックではスポーツウォッチはもちろん、通常であれば常にストックしていたはずのドレスウォッチ系までもが姿を消すという異常事態になっている。それに伴い市場価値も急ピッチで上昇し、いまや新品状態の〈DAYTONA(デイトナ)〉116500LNの白文字盤が500万円台後半~700万円代、〈SUBMARINER(サブマリーナ)〉126610LVも200~300万円代という目を疑うような価格に化けた。特にデイトナはここ半年ほどで約200万円ほど上昇しており、「えげつない」という言葉がぴったりなほど。ハードコアな〈ロレックス〉ファンは正規ブティックを毎日訪れる「マラソン」と呼ばれる行為を根気よく続けているが、これほど価格が上昇すると「そりゃ定価で買えたら最高だよね…」と納得してしまう。
あまりに手に入りにくい存在になってしまったため、もはや自分には関係がないと諦めモードの方も多くいらっしゃるのではないだろうか。
本稿で紹介するのは、そんな諦めモードの方はもちろん、人とは違う何かを探している時計好きのための逸品。〈ロレックス〉を始めとした高級スイス製機械式時計を独自にカスタムするブランド、〈MAD Paris(マッド・パリ)〉によるGMTマスターIIである。
フランス・パリで活動する〈MAD Paris〉は、スイス・ジュネーブの老舗時計メーカーで修業した時計職人やデザイナーたちが結成したカスタムブランド。超一流メーカーで得た専門知識とスキルを駆使し、吊るしの状態で完成されている高級腕時計をさらに華麗に、そしてユニークにカスタマイズすることで知られている。ノーマルの時計では満足できなくなってしまった富裕層や超が付くほどの時計好きから「最後の一手」として愛されているのが〈MAD Paris〉なのだ。
通常こういったカスタムブランドはカリスマ的な仕掛人が控えているものだけれど、〈MAD Paris〉は完全に謎に包まれている点も興味深い。代表者やクリエイティブディレクターが表に出ることがなく、アパレル系ブランドであればルーティーン的に出されるプレスリリースの類も一切公表されないため、次にどんなアイテムが登場するのか、そもそも誰がどんな思想をもって制作しているのかすらも公表されていない。
一部の限られた時計店のオーナーやセレクトショップの関係者、そして上顧客の一部はいくらかの情報を把握しているようだが、一般消費者から見ると謎に満ちた〈MAD Paris〉。カスタマイズウォッチブランドの中で世界トップと称される実力は、宝石を惜しげもなく使って装飾されたモデルや、漆黒にペイントされたクラシックなスポーツウォッチを見ると、素人にも凄みが伝わってくる。

JENNIE for Calvin Klein
JENNIE for Calvin Klein

JENNIE for Calvin Klein
JENNIE for Calvin Klein

卓越した技術を部位ごとに使い分け、繊細な質感を実現

航空パイロットのために生まれた〈ロレックス〉GMTマスターIIも、〈MAD Paris〉の手に掛かるとご覧の通り。時計本体はもちろん、ブレスレットとベゼルもオールブラックにリペイント。ベゼル上の数字はホワイトカラーでペイントされ、下半分は鮮やかなレッドカラーに染められている。このありそうでないカラーウェイはカスタムウォッチならではだし、どちらかというとクラシックな雰囲気であるはずのGMTマスターIIに新鮮さを与えている。
ちなみに腕時計にリペイントするのは非常に難易度が高く、専門的な設備と技術を持っていないとまず不可能な領域なのだが、〈MAD Paris〉が作るオールブラックの「GHOST」シリーズは大手時計メーカーも驚くほどのテクニックが使われている。塗料として使用するダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)を霧状にしてメタルに吸着させる際に、金属の種類によって細かく処方を変えるのだという。この特殊な技術を使い分けることにより、ただ真っ黒にペイントするだけではなく、本体、ベゼル、ブレスレット、そしてリューズやプッシャーといったパーツごとに質感の異なるハイエンドなブラックカラーを与えることに成功しているのだ。実際、このGMTマスターIIを見ると文字盤は粒感のあるマットブラックで、ベゼルやブレスレットは光沢感のあるブラックであることが分かる。
本モデルは〈MAD Paris〉が〈ロレックス〉GMTマスターIIの中古モデルを独自にフルカスタムしたもの。もちろん〈ロレックス〉純正の保証が効かないというデメリットはあるものの、一般的なメンテナンスや修理は専門的な時計店で対応可能となる。気になる価格は5,014,500円(輸入関税込み)。「あれ?思ったより安いじゃん!」と思ってしまったのは筆者だけだろうか。中古モデルがベースとはいえ、ここまでハイレベルなフルカスタムが施された〈MAD Paris〉のGMTマスターIIを500万円代前半で購入できるのは掘り出し物では?先に述べたように、吊るしの〈ロレックス〉が異常な市場価値になっている今、どうせ高いお金を出すなら限りなくワンアンドオンリーに近いハイエンドなカスタムモデルをゲットするのも選択肢としてはかなりアリではないだろうか。
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同じく〈MAD Paris〉が手掛けたブラックフィニッシュのサブマリーナも併せてチェックしてみよう。
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