CHEVROLET CAMARO

アメリカン・マッスルカーがこの世から消えてなくなる日

自動車業界における最大の反逆児的存在であり続けてきたアメリカン・マッスルカーが続々と生産終了を迎える。本稿では2023年初頭に現行型の生産にピリオドを打つ〈CHEVROLET〉CAMARO をフィーチャー。時代を彩ってきた名車の美しい写真と共に、粛々と終わりへと向かいつつあるマッスルカーに思いを馳せる。


Written : LIVE IN RUGGED

チャレンジャーに続き、カマロも現行型をもって生産終了へ

2023年3月22日(土)、アメリカの自動車メーカー、General Motors Company(ゼネラルモーターズ)が同社を代表するスポーツカー、〈CHEVROLET(シボレー)〉CAMARO(カマロ)の生産を2024年1月に終了することを発表した。ライバルである〈DODGE(ダッジ)〉のアイコニックなマッスルカー、CHALLENGER(チャレンジャー)はすでに2024年に生産終了することがアナウンスされていたため、奇しくも2024年という同じ年にアメリカを代表する2つのマッスルカーの現行型が姿を消すことになる。
EV化が加速する2020年代において、スポーツカーに対する風向きは強くなるばかりだ。特にガソリンを多く消費する昔ながらのアメリカン・マッスルカーはもはや風前の灯火と例えてもいい状況だろう。〈シボレー〉にはまだ CORVETTE(コルベット)というアメリカ屈指のハイパフォーマンス・スーパーカー/マッスルカーが残されているし、〈FORD(フォード)〉には MUSTANG(マスタング)という名モデルがある。とはいえ、ポニーカーの愛称で長年親しまれたカマロとチャレンジャーの生産終了というニュースには、速くてかっこいいクルマが好きな人々にとって寂しいという一言では片づけられない重みがある。

CHEVROLET CAMARO
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進む全世界的なEV化

〈シボレー〉はカマロの生産終了を発表する場で「直接の後継車は発表しないが安心してほしい。これがカマロの物語の終わりではない」と述べ、将来の後継モデルに希望を持たせた。とはいえ、もし近い将来にカマロの名を冠するモデルが復活したとしても、マッスルカー好きが心の底から納得できるようなクルマではない可能性が高い。ゼネラルモーターズは 2035年までにすべてのラインアップを EVにする計画を発表しており、すでに数十億ドルもの開発・設備投資を進めていると報じられている。この流れはゼネラルモーターズのみならず、欧州や日本も同様だ。自動車の EV化やハイブリッド化に対する世の中の流れは今後加速度的に勢いを増し続けるだろう。

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CHEVROLET CAMARO
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第2次マッスルカー黄金時代を飾る存在へ

1967年に初代が誕生した〈シボレー〉カマロは低迷期はあったものの、ほぼ一貫してアメリカを象徴するマッスルカーであり続けた。特に1969年まで生産された初代モデルのハイパフォーマンスモデルは伝説的な存在だ。レース用の排気量 5,000cc エンジンを搭載した Z28 は現在1,000万円を優に超えるコレクターズカーになっている。1970年~1981年まで生産された 2代目や 1982年~1992年まで生産された 3代目、そして 1993年~2002年まで生産された 4代目にもコアなファンがいるが、7年間ものブランクの後に劇的な復活を遂げた 5代目は世界的なインパクトを与えた。初代をオマージュするレトロモダンな素晴らしいルックスと、往年の V8エンジンを搭載するパワフルな仕様は本国アメリカを筆頭にファンを狂喜させた。当時世界的に大きな興行成績を記録した映画「TRANSFORMERS(トランスフォーマー)」にコンセプトモデルが登場するという戦略的なアプローチもハマり、カマロのかつてないほどの黄金期がスタートしたことが記憶に新しい。
5代目カマロは直噴 V6エンジンを搭載するエントリーモデルも用意されていたが、特にファンを夢中にさせたのが 6.2L もの大排気量の V8エンジンを搭載する SS RS だ。伝統的な OHVエンジンを現代的にチューンした V8エンジンは432ps もの大パワーを発揮し、いかにもマッスルカーなデザインを裏切らない力強いサウンドと走りでファンを魅了する。そして2012年には 6.2L LSAエンジンにスーパーチャージャーが組み合わされ 572bhp というカマロ史上最強のスペックを誇る ZL1 が登場。もはやスーパーカー級のパワーを与えられた〈シボレー〉カマロは、先に述べた〈フォード〉マスタングや〈ダッジ〉チャレンジャーといったライバルたちと切磋琢磨しながら2000~2010年代の第2次マッスルカー黄金時代を飾るアイコニックな存在となった。

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買えるうちに買っておこう

現行型の第6代目は 2015年にデビュー。先代モデルと比べて 90kg 以上の軽量化と 28%の剛性アップを果たした最新モデルでも、6,000cc 以上の大排気量・大パワーを持つ ZL1 や、サーキット走行に特化した ZL1 1LE といったハイパフォーマンスモデルも続々と誕生。ドイツのニュルブルクリンク北コースにて 7分16秒04 というスーパーカー顔負けのタイムを記録するなど、かつては「直線だけ速い」と揶揄されがちだったアメリカン・マッスルカーのイメージを覆すほどの速さも見せた。
名実ともにアメリカを代表するマッスルカーとして復権した〈シボレー〉カマロは近年セールス的に苦戦していたようだが、生産終了の決定が下されたのは売上的な面だけではなく、今後の自動車業界の大きな流れを熟慮した結果なのだろう。私たちが大好きなマッスルカーは消える。完全に消滅する日はまだ遠いだろう。しかし、伝統的な V8エンジンを搭載するクルマを新車として購入できる機会は、もしかしたら2020年代が最後かもしれない。非常に長くなってしまったが、本稿で伝えたいことを一言でまとめるとすれば「買えるうちに買っておこう」ということ。私たちが思う以上に、マッスルカーがこの世から消える日は近いかもしれない。
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