Most Hype Sneakers 202305

「脱ナイキ」加速化? adidas、CONVERSE、New Balance、Salomon など、今もっとも注目されているスニーカーブランドを特集

帝王〈Nike〉に取って代わる頂点の座に収まるのはどのブランドか?〈adidas〉や〈CONVERSE〉、〈New Balance〉、〈Reebok〉といった老舗ブランドから、近年急激にファンを拡大している〈HOKA ONE ONE〉〈On〉〈Salomon〉まで幅広いスニーカーブランドを取り上げ、その魅力を探る。


Written : LIVE IN RUGGED

絶対的存在の〈Nike〉に代わるブランドを探る

10年以上に渡るスニーカーブームの真の立役者が〈Nike(ナイキ)〉であることは火を見るよりも明らかだ。Air Jordan 1(エアジョーダン1)Dunk(ダンク)Air Max(エアマックス)シリーズといった80~90年代に誕生した数々の名モデルを筆頭に、様々な限定版やコラボレーションモデルは飛ぶように売れ、一部は目を疑うようなプレミアがついている。〈ナイキ〉のブランディングが非常に上手いことも理由として挙げられるけれど、シンプルに物凄くかっこいいスニーカーが数え切れないほどあることが、いまだに業界トップに君臨している最大の理由と言えるだろう。
しかし、諸行無常という言葉がある通り、何事も永遠に続くことはない。長く続いたスニーカーブームが徐々に落ち着き、〈ナイキ〉をあえて履かない人が増えていることも事実。そこで本稿ではスニーカー業界の帝王である〈ナイキ〉に取って代わる可能性のあるブランドを複数フィーチャーし、これからのスニーカー業界の未来を考える。以下で紹介するブランドの中にあなたの琴線に触れるものがあると幸いだ。

adidas Originals Stan Smith JAPAN SMU
adidas Originals Stan Smith JAPAN SMU

adidas Originals × FOOT INDUSTRY
adidas Originals × FOOT INDUSTRY

adidas ORIGINALS ADIMATIC
adidas ORIGINALS ADIMATIC

クラシックな名モデルをベースに独自路線を行く〈adidas〉

まずは〈ナイキ〉よりも長い歴史を持つ〈adidas(アディダス)〉から。
今からちょうど50年前の1973年に誕生し、伝説的なテニスプレイヤーの名を冠した STAN SMITH(スタンスミス)は、コート上でも街中でも快適な履き心地を約束してくれるクラシックな傑作モデルだ。〈アディダス〉を象徴する3ストライプスの代わりに3列に並ぶ穴は、靴の中にこもる熱気を放出する役割を果たすとともに、ごくシンプルな手法でデザイン上の重要な要素としても機能している。クラシックなルックスと簡素な作りはまさに時代を超えた逸品。過剰なデザインも多い今の時代に改めて見ると、このスニーカーが男女を問わず愛されるている理由が納得できる。
なお、JAPAN SMU は日本限定モデルとして 2022年10月にローンチ。一部にリサイクル素材を使用したアップサイクルな仕様である点も注目を集めた。
〈adidas Originals(アディダス オリジナルス)〉×〈FOOT INDUSTRY(フットインダストリー)〉によるコラボレーションモデルである CAMPUS(キャンパス)は 2023年2月に登場。「アジア人の足に馴染む最適な”ハキモノ”を作り出す」というビジョンを掲げる〈フットインダストリー〉も、スニーカーヘッズたちにとってはおなじみの存在ではないだろうか。こちらのモデルは、キャンパスの特徴であるライニングをレザーステッチで表現するという絶妙なクラフト感で、クラシックでありながら未来を予感させる方向性を提示している。あらゆるファッションに適合するミニマルなカラーウェイと、柔らかなレザーアッパーがもたらす極上の質感も魅力だ。
2022年に電撃的な復活を遂げた〈アディダス オリジナルス〉の ADIMATIC(アディマティック)も見逃せない。1996年に誕生したアディマティックは、特にストリートファッションを好んで着る若者やスケーターなどが好んで履いていたモデル。特定の年代に属さないタイムレスでアナログなデザインと極太の3ストライプスが〈アディダス〉らしさを強く主張し、リバイバル後すぐに人気モデルとなったことも記憶に新しい。いかにもストリート的な飾らないルックスもアディマティックの美点と言えるだろう。

Jaeger-LeCoultre Reverso Tribute Small Second
Jaeger-LeCoultre Reverso Tribute Small Second

Jaeger-LeCoultre Reverso Tribute Small Second
Jaeger-LeCoultre Reverso Tribute Small Second

Jaeger-LeCoultre Reverso Tribute Small Second
Jaeger-LeCoultre Reverso Tribute Small Second

シンプルな造形であるがゆえに、多彩なアレンジが光る〈CONVERSE〉

永遠のエバーグリーン、〈CONVERSE(コンバース)〉も魅力的なモデルを次々と投入している。2023年3月にローンチされた JACK PURCELL GORE-TEX®(ジャック・パーセル ゴアテックス®)は、クラシックスニーカーの代名詞的存在であるジャック・パーセルをゴアテックス® 仕様により防水化に成功。雨に弱いと言われることもあった同モデルの弱点を克服している。ゴアテックス® で防水性能を高めながら、アッパーはいつものジャック・パーセルである点も素晴らしい。
同じく 2023年3月にローンチされた STAR CRUISER(スタークルーザー)は、1977年に登場したランニングシューズである STARFIRE(スターファイヤー)をアップデートしたモデル。懐古主義的なアッパーのデザインに機能性の高いソールを合わせた意欲作で、極上と言われる履き心地が早くもファンを魅了している。ヴィンテージ感のある毛足の長いスウェードと耐久性と撥水性に優れたコーデュラリップナイロンのコンビネーション、ビブラムとオーソライトを搭載したソールが〈コンバース〉の輝かしい未来を示している。
日本のメンズファッションブランド〈WHIZLIMITED(ウィズリミテッド)〉と「mita sneakers(ミタスニーカーズ)」のトリプルコラボレーションとなる ALL STAR US HI WLMS は、2023年4月に登場。古き良きアメリカのヴィンテージテイストを追求し、ラバーソールの艶出し加工やコットンシューレース仕様などでデッドストックさながらの風合いを醸し出している。また、12oz のキャンバス、FOG キャンバス、コットンツイル、リップストップといった質感が異なる生地をパッチワーク的なアプローチで構成し、唯一無二のテキスタイルのようなデザインに。スムーズな着脱を可能にする取り外し式のジッパーユニットを搭載するユーザビリティの高さも嬉しい。
〈nanamica(ナナミカ)〉とのコラボレーションモデル、ALL STAR® nanamica GORE-TEX® HI(オールスター ナナミカ ゴアテックス® ハイ) は〈コンバース〉を代表するオールスターをベースに、シックなカラーリングでモード的なルックスに昇華。誰もが一度は見たことがある永久定番品であるオールスターも、色使いの妙でいつものルックスとは大きく雰囲気が変わる。

HOKA ONE ONE
HOKA ONE ONE

ランニング時の負担を軽減することを追求した新興ブランド〈HOKA ONE ONE〉

2009年にフランス・アネシーで誕生し、アメリカ・カリフォルニア州サンダバーバラに本社を置く新興ブランド〈HOKA ONE ONE(ホカオネオネ)〉は、近年もっとも注目度の高いシューズブランド。摩訶不思議なブランド名の由来はブランド誕生のルーツでもあるニュージーランド・マオリ族の言葉が由来で「It is time to fly(さぁ、飛ぼう)」を意味する。ランニング時に下り坂を楽に走ることのできるスニーカーを追求して生まれた〈ホカオネオネ〉のシューズは、ハイボリュームのミッドソールとアーチ状のフォルムを備えたこれまでにないデザインが特徴。しかし決して奇をてらって生まれたデザインではなく、すべては足に多大な負担がかかる下り坂や荒れた道を走破するための機能性を追求した結果だ。
日本上陸は2017年とつい最近だが、本物志向のランナーや感度の高いファッショニスタたちから早くも支持を集めている。〈ホカオネオネ〉というキュートでキャッチーなブランド名がより一般層に浸透するのも時間の問題だろう。余談だが筆者は初めてブランド名を見た時に「ホカワンワン」だと思った。

Aimè Leon Dore × New Balance
Aimè Leon Dore × New Balance

AURALEE × New Balance 2002R
AURALEE × New Balance RC30

eYe JUNYA WATANABE MAN × New Balance Rainier
eYe JUNYA WATANABE MAN × New Balance Rainier

大人向けデザインと仕様で熱狂的なファンから支持される〈New Balance〉

「脱ナイキ」を語るにあたって決して欠かせないのが〈New Balance(ニューバランス)〉だ。このブランドは〈ナイキ〉がどれだけ人気が出ようともたくさんの固定ファンを抱えており、ある意味で完全なる独自路線を突き進んでいる印象がある。スニーカー業界屈指の老舗ブランドでもある〈ニューバランス〉にも数多くのヒットモデルが存在しているが、色々経験してきた大人の支持層が厚い。
先日ローンチされ話題を呼んだ〈Aimè Leon Dore(エメ レオン ドレ)〉とのコラボレーションモデル 1906R Jade では、2000年代のランニングシューズのテクノロジーの美学に敬意を表しつつ、モダンでタイムレスなスタイルを提案。衝撃吸収素材である ABZORB(アブゾーブ)を搭載するソールに N-ergy(エナジー)クッショニングを組み合わせ、TPU 素材でアーチを補強するスタビリティウェブを採用したソールユニットによって高いレベルの履き心地を実現した。メッシュアッパーやシュータンの花柄グラフィックも両ブランドのファンを喜ばせるディテールだ。
2022年7月にローンチされた〈AURALEE(オーラリー)〉とのコラボレーションである 2002R では、ダッズスニーカーのお手本のようなデザインでありながら繊細なカラーリングで見事なほど大人専用のモデルを完成させている。ワントーンで統一しつつ、ワンポイントでライムイエローのアクセントを利かせた色使いのセンスは、近年発売された〈ニューバランス〉の中でも屈指のハイセンスなモデルと言えるのではないだろうか。
また、両ブランドの最新コラボとして2023年4月に発売された RC30 は、リッチなへアリースウェードがまさに大人仕様。「さぁ、スウェードです!」と言わんばかりの長い毛足がこれほど似合うスニーカーブランドもなかなかない。やはり〈ニューバランス〉はどこか大人っぽいデザインが良く似合う。
また、2023年4月にローンチされた〈eYe JUNYA WATANABE MAN(アイ ジュンヤワタナベ マン)〉とのコラボレーションモデルでは、〈ニューバランス〉初のハイキングブーツとしてデビューした Rainer をベースに採用。キャンバスアンダーレイとヌバックオーバーレイを組み合わせたアッパーとグリップ力と耐久性に優れたビブラムソールにより、スニーカーの枠を超えて品質の高い一足を作り上げている。〈ニューバランス〉は〈COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)〉からも指名を受けることが多いが、ファッション感度の非常に高い〈アイ ジュンヤワタナベ マン〉のようなブランドがパートナーに選ぶハイクラスな一面も同ブランドの魅力かもしれない。

LOEWE × On
LOEWE × On

ミニマルなデザインと超が付くほど快適な履き心地で信者を増やす〈On〉

2010年に誕生したばかりの〈On(オン)〉も〈ホカオネオネ〉と同様、近年非常に注目を集めている新興ブランドだ。2022年3月にはスペインのラグジュアリーブランド〈LOEWE(ロエベ)〉と初となるタッグを実現させ大きな話題を呼んだ。
元プロトライアスロン選手であった創業者の一人が、長年怪我に悩み続けてきた自身の経験を活かしながらエンジニアと共に革新的なランニングシューズの開発に着手したことから始まった〈オン〉は、ミニマルなデザインと非常に快適な着用感が特徴。何年もリウマチに悩む筆者の母が〈オン〉のスニーカーでは痛みを感じない!と興奮していたことも付け加えておきたい。

Maison Margiela x Reebok THE CLASSIC LEATHER TABI NYLON
Maison Margiela x Reebok THE CLASSIC LEATHER TABI NYLON

Reebok × 1LDK CLASSIC LEATHER
Reebok × 1LDK CLASSIC LEATHER

ハイファッションとの親和性が高い洗練された〈Reebok〉

イギリス発祥のスポーツブランド〈Reebok(リーボック)〉は、これまで挙げたブランドの中でも特にハイファッションとの親和性が高いかもしれない。代表的なコンビ相手がフランス・パリのハイブランド〈Maison Margiela(メゾン マルジェラ)〉だ。2020年9月に記念すべき第1弾が登場してから3年にわたって展開されるコラボレーションモデルは、いずれも非常に高い人気を持つ。特に〈メゾン マルジェラ〉のアイコニックな TABI(タビ)のデザインを反映し、シューズの先端がスプリットしたモデルは両ブランドのコラボレーションを象徴する一足として記憶されている。
また、現在進行形で LIVE IN RUGGED でお届けしている連載「スニーカーの次なるトレンドはシンプル&ミニマル」の第1回目として投稿した「1LDK」とのコラボモデルである CLASSIC LEATHER(クラシックレザー)のような超シンプルなデザインも〈リーボック〉の魅力。抑えた美が光るミニマルな手法は、スニーカーがファッションアイテムのひとつとして非常に重要であることを改めて私たちに示してくれる。

COMME des GARÇONS x Salomon
COMME des GARÇONS x Salomon

Salomon x DOVER STREET MARKET ACS PRO
Salomon x DOVER STREET MARKET ACS PRO

Salomon XT-6 GTX
Salomon XT-6 GTX

モダンで先鋭的なスタイルにこれ以上ないほどマッチする〈Salomon〉

本稿の最後を飾るのは、スニーカー市場で近年もっとも急成長を遂げている〈Salomon(サロモン)〉だ。1947年にフランス南東部の湖畔町アネシーにて創業した〈サロモン〉は、元々スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツ用品を製造するメーカーであり、トレイルシューズやトレッキングにも力を入れてきた。ある種特殊な環境下で使われるツール作りを得意としてきた同ブランドは2000年代にマウンテンスポーツにおけるナンバー1ブランドへと成長。その勢いに乗り発足した〈Salomon Sneakers(サロモン スニーカーズ)〉では、モダンでアーバンなライフスタイルにマッチするシューズラインを追求している。
2013年から発売されている XT-6 は、クッション性、耐久性、ダウンヒルコントロールなどのトレイルに欠かせない機能を担保しながら、これまでにない都会的なルックスとカラーリングで瞬く間にスニーカーヘッズを魅了。また、長距離にわたるテクニカルトレイルの俊敏性と安定性を求めるトレイルランナー向けに開発された XT-WINGS は、トレイルランニングシューズの機能性はそのままに、タウンユースでも対応する快適な履き心地を実現。こちらも〈サロモン〉らしいオリジナリティあふれるルックスで幅広い年齢層の男性から支持を集めている。
〈コム デ ギャルソン〉の 2023年秋冬コレクションでは、ランウェイを闊歩するモデルの足元を〈サロモン〉のスニーカーが飾ったことも記憶に新しい。スニーカーブランドとして強力な成功を収めるにはファッションブランドとの関係性が不可欠であり、その点でも〈サロモン〉は今後ますます存在感を強くしていくだろう。
〈アディダス〉、〈コンバース〉、〈ホカオネオネ〉、〈ニューバランス〉、〈オン〉、〈リーバック〉、〈サロモン〉と7つの注目ブランドを断片的にフィーチャーしたが、気になるブランドもしくはモデルは見つかっただろうか?スニーカー業界は〈ナイキ〉をしのぐ老舗からこれからの市場の拡大を狙う新興ブランドまで、まさに群雄割拠の様相を見せている。ある意味で、市場自体が熟成を迎えている今だからこそ、数年後には現在よりも比較にならないほど人気と売上を持つブランドがあるかもしれない。
ファッションの流れがどのように変わろうとも、私たちがスニーカーを履かなくなったり、ましてや嫌いになる日が来るとは思えない。だからこそ、自分にとっての定番は変わらず楽しみながらも色々なモデルを楽しむ心の余裕は持っていたいものだ。
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